書評

読書メモ – 「風の歌を聴け」- 村上春樹

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「風の歌を聴け」に出会うまで

こんにちは!じゅんです。

今日は、久しぶりに思い立って、村上春樹さんの「風の歌を聴け」(講談社文庫)を読み直しました。

村上春樹さんといえば、日本代表する小説家といっても過言ではないくらい、知名度のある作家さんです。

私が村上さんの小説を初めて読んだのは、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(文藝春秋)。

その時は、なんて繊細に人間の思考を描く作家さんなんだと思いました。

そして、それからしばらくして読んだのが、「風の歌を聴け」です。

「風の歌を聴け」は村上さんの第一作品で、この作品で村上さんは第22回群像新人文学賞を受賞しています。

 

「風の歌を聴け」を読んだ感想

表現すること=存在すること?

p.30

文明とは伝達である、と彼は言った。もし何かを表現できないなら、それは存在しないのも同じだ。

この文章を読んだときに、これは私がずっと感じてきた不安を、代弁してくれていると思いました。

私は、代わり映えのない生活を過ごしているとき、自分は何のために存在しているのかと考えることが多かったのです。

そんな疑問を解消するために始めたのがこのブログ。

ブログを更新する度に、何かを残せている、表現できているという実感が沸き、自分の存在意義を少しずつ感じれるようになりました。

 

ユーモアに溢れる主人公

p.81

「気にすることはないさ。誰だって何かを抱えてるんだよ。」「あなたもそう?」「うん。いつもシェービング・クリームの缶を握りしめて泣くんだ。」 彼女は楽しそうに笑った。何年か振り、といった笑い方だった。

 

この小説の主人公は、どこか悟っている人間です。

主人公をとりまく人々は、悩み苦しみを表に出すタイプのため、よりそう感じるのかもしれません。

主人公は周りを慰めるときに、きびしい現実をつきつけますが、同時にユーモアを持っているところが魅力です。

上記の引用文のように、私も気の利いたことが言えるようになりたいですね。

相手を励まそうとするときに、少しのユーモアを加えるというのはなかなか出来ることではありません。

村上春樹さんの作品の主人公は、とても魅力的な人が多いですが、その片鱗が「風の歌を聴け」で既に表れていますね。

 

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 共感する物語

p.113

高校の終わり頃、僕は心に思う事の半分しか口にだすまいと決心した。理由は忘れたがその思いつきを、何年かにわたって僕は実行した。そしてある日、僕は自分が思っていることの半分しか語ることのできない人間になっていることを発見した。

 

私は学生時代、自分が何かをしゃべるから嫌な思いをするんだと感じたことがありました。

もうそのきっかけはあまり覚えていないのですが、そのときから自分の本心をしゃべることが限りなくゼロになったのです。

そして、ストレスを発散するすべをなくしてしまい、そのストレスがたまりにたまってパンク・・・なんてこともありました。

私が誰かに相談出来るような人間であれば、回避出来る事柄も多くあったでしょう。

しかし、学生時代に「決めた」ことはもう私から離れることはありません。

これからは共存していくしかないのです。

この文章を読んで、私は自分だけではないのだなという安心感と同時に、少しの寂しさも感じました。

私にとって、村上さんの小説は、「共感」出来るという気持ちが一番大きいです。

 

まとめ

私は村上さんの作品のどこかあいまいな雰囲気が大好きです。

人は得てして自分の本心を隠し生活しているため、「風の歌を聴け」のようにつかみきれない人間の思考を文章にしたものにとても惹かれるのかもしれません。

これは「風の歌を聴け」だけではなく、私が読んだ村上さんの作品全てに感じることで、このように感じる作家さんは今まで一人もいませんでした。

これからも一読者として、村上さんの新作を楽しみにしていたいと思います。

 

 

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