【感想】予想を裏切られる?恋愛小説の傑作です。「陽だまりの彼女」/越谷オサム

はじめに

作品紹介

こんにちは、じゅんです。

私は以前、「陽だまりの彼女」という作品を、テレビの再放送で観たことがありました。

その時は本当にちらっとしか観なかったのですが、松本潤さんと上野樹里さんが主演だったのでなんとなく記憶に残っています。

そして今回は、その原作本である「陽だまりの彼女」(新潮文庫)の感想を書いていきます。

かなり有名な作品で、2011年に啓文堂書店が主催した「おすすめ文庫大賞」に選ばれ、2013年9月には累計発行部数100万部を突破しています。

著者は「越谷 オサム」さんという方で、主に青春小説を手掛けている方のようですね。

作品情報

書名:陽だまりの彼女

著者:越谷オサム

出版:新潮文庫

項数:342

「陽だまりの彼女」を読んだきっかけ

本屋でこの原作本を偶然見かけ、映画での哀愁漂う上野樹里さんの姿が印象に残っていたので、購入を決めました。

映画⇒原作という私としては少し珍しいパターンです。

お勧めしたい人

・一筋縄ではいかない恋愛小説が読みたい

・感動で心を満たしたい

・ドキドキ・ハラハラしたい

ストーリー紹介と感想

いじめられていた昔の同級生との恋愛

この作品は、主人公の奥田が仕事先で中学の同級生である真緒と邂逅するところから始まります。

主人公の奥田は交通代理店の営業で、真緒は下着ブランド「ララ・オロール」の広報。

そこで、中学時代不出来だった真緒に、資料の内容が分かってもらえるかなんてことを考える奥田ですが、なんと計算ミスを真緒に指摘されてしまいます。

不器用でいじめられていた中学時代とは異なり、仕事をそつなくこなす彼女を見て、奥田は少しの劣等感と彼女の成長を嬉しく思う気持ちを抱きます。

p.25

しかし、彼女の努力はこうして大きく実った。何か手助けができたわけではないけれど、僕まで報われた気分だ。

物語の冒頭から、主人公の人柄の良さがわかる文章です。

正直言うと、私はこの部分を読んだとき、「自分だったら劣等感が強すぎて絶対こんなこと思えない、読んでくの辛いかも・・・」と思いましたが、実は奥田には真緒の成長を喜ぶ理由がありました。

中学生の時、いじめられていた真緒を救ったのは奥田で、それだけではなく不器用な真緒に勉強を教えたり、恋のような気持を抱いたことまであったのです。

たしかに、そういった経緯があるならば、引用部分のような気持ちを抱いてもおかしくないのかもしれませんね。

その後、二人は異常なまでに早いペースで深い関係になっていきますが、それからがこの小説の始まりでした。

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見え隠れする真緒の謎

二人がお互いの関係を認め、真緒の実家にあいさつに行くと、真緒の父に結婚はもう少し考えた方が良いという風に言われてしまいます。

理由を聞くと、それは奥田のせいではなく、真緒の病気が原因でした。

真緒の病気は「全生活史健忘」というもので、里親(現両親)にひきとられるまでの記憶がなくなっているのです。

このとき、奥田は少なからずショックを受けますが、気持ちは変わらず真緒と一緒に生きることを決断します。

p.101

簡単なことだ。僕は真緒の経歴や名前を好きになったんじゃない。気まぐれだけど努力家で、少々間の抜けたところもあるが心優しい、そんな真緒が好きなんだ。名前や過去という砂は零れ落ちてしまったが、それでも手のひらには愛情がしっかりと残っている。

ロマンチックで本当に素晴らしい文章ですね。

「名前や過去という砂は崩れ落ちてしまった」や、「それでも手のひらには愛情がしっかりと残っている」なんて私には一生かかっても書けないです。

しかし、忘れてはいけないのが、真緒の両親が結婚に反対しているということ。

正直、「記憶の病気というだけで結婚を遅らせる理由になるか・・・?」と私は思いましたし、「きっとまだ何かあるんだろう」というような不安と期待がページめくる手に拍車をかけました。

二人はその後、強行突破で同棲生活始めます。

そして、たまに衝突することもあるものの、幸せな時間が続きます。

この部分を読んでいる時が、一番安心出来ました。

しかし、徐々に真緒に異変がおきてきます。

普段では絶対とらない行動をとったり、体に異変が出てくるのです。

奥田は、今の幸せが続くと信じながらも、どこか不安を抱えるようになっていきます。

この小説の面白い所は、真緒の異変に一貫性がみられないため、読者は一体この先どうなるんだという予想が立てられないことです。

散りばめられた伏線と怒涛の回収

この小説ではラストに向けて数多くの伏線をはり、それを最後に一気に回収するのですが、結末は絶対に予想できないものでした。

恋愛小説は、だいたい最後を予想出来てしまうことが、ときにウィークポイントになりえますが、この小説は伏線のはりかたが絶妙なためそういった弱点を解消しています。

そして、私が特に好きな伏線も最後で明かされています。

これは物語の中でそこまで大きいわけではない事柄なのですが、非常に小説らしいというか、ロマンチックな”遊び”といいますか、ネタバレになってしまうので詳しくは書けないのがもどかしいです。

ぜひ、「え?あれってそういうことだったの?・・・・」っていう気分をみなさんにも味わってほしいなと思います。

さいごに

この小説は、恋愛小説ですが、どこかミステリー要素もつまった作品でした。

王道だけど、王道じゃない。

普通の恋愛小説にマンネリしてしまっている人にはぜひ読んでいただきたいですね。

その際は、ぜひ自分なりに予想して読み進めると良いと思います。

良い意味で予想を裏切ってくれますよ。

忙しい現実に疲れてしまった方、ぜひこのロマンチックな物語の世界に入り込んで癒されませんか?

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